strange boutique
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1.桟橋 2.広場 3.土手 4.橋
- 1.桟橋
「ここでゴミを燃やしたり,捨てたりしちゃいけないよ」
「これは,ごみじゃね~んだ。生活の残骸なんだ」
「残骸って?ウ~ン。でもゴミだよね。
利用価値が無くなった物を捨てに来て,燃やしてる訳だから」
「俺達にとっちゃゴミじゃないのさ。生き続けてきた残骸なのさ」
「理由はどうあれ。
捨てても,燃やしても,それを川に流しても。
みんなの生活の場を汚しちゃいけいよ」
「俺たちが生活してきた証と言える残骸に火を点ける事で,炎には生活の灯。煙には生活の吐息を感じるんだぜ。
そして,抜け殻になった残骸を川に流すのは,泡沫の命の儚さを水に流したいからなのさ。
利用価値が無い物などありはしない」
「・・・・」
「だから・・・アンタラなんかに邪魔される筋合いなんかないね~」
「ほんのちょっと想像力を働かせることが出来れば,自分達のやってる行為が反社会的な行為だって事ぐらい判るんじゃないの。
あなた達はわざわざ自転車や車で街から来てるのでしょう。
人のいない様なところに持って来るのは,近所の空き地や道端などに捨てる罪悪感があるからじゃないの。
それと自分の居住空間から見えないところに持って行きたい。
自分達のテリトリーが良ければいい。
と言うただそれだけの理由がそうさせてるのだし。
燃やすのだって,川に流すのだって,同じことだよね。
自分に都合のいいように理由付けするのは,心の奥底には後ろめたいという意識があるからだよ。」
「関係ないね,。俺らはやりたいようにやるだけさ」
「・・・・」
- 2.広場
来るたびに遭遇する車。
何時も同じ場所に駐車している。
人の気配はします。
おそらく中で横になってる。
時折起き上がり周りの様子を伺ってるのだと思う。
オフロードバイクが来ると,移動を始める。
散歩中の人や犬が来ると,移動を始める。
他の車が来ると,移動を始める。
車で来る人は,ゴルフの打ちっぱなしだったり,
リモコン飛行機を飛ばす人だったり,
オフロードバイクを積んでこの場所で走らせに来たり,
それぞれの思いを乗せ。
自分の都合で来て,様々な思いと一緒に,様ざまな物を落としていく。
そんな人たちとの接触を避ける様に,その都度そそくさと土手沿いの草原の方に移動する。
広場に居なくなった途端,戻って所定の場所に駐車する。
寒くても暑くても。
「人の都合のいい思いで落としていく,落とし物が嫌い」- 3.土手
遙か前方。
土手の内側の道に自転車?
盗まれて放置された自転車?
ここまで来て放置する理由は無いよな~と考えながら,さらに進むと。
土手のコンクリートで固められた斜面に何かあります。
雑草の間から見えたのは。
人?
人なの?
横になったまま動く気配がない。
人だ!
背中が凍り付いた瞬間。
・・・・・・・・・・・
つい最近焼けた車の中で人が発見された現場のとても近く。
・・・と頭をよぎる。
「ドキ,ドキ,ドキ」さらに鼓動が早く打ち始める。
何で?ここに
かすかに動いてる・・・生きてるよね。
まだ2月デッセ。
日向ぼっこするには,夕暮れ時だし風は冷たくてとっても寒い。
休んでるにしても,横たわるか普通。
コンクリートは冷たく体温を奪うもんね。
と言う事は
行き倒れ?
体調が悪くなって休んでる?
防寒着の中に着込んだフリース,そのまた下にある携帯電話を防寒手袋をした右手で確認。
防寒着の前の部分のファスナーを下げ,
いつでも取り出せるように右手の手袋を外しながら,臨戦モードに移行しつつ。
横たわる人物に急接近。
どうも,体調が悪くて休んでるという風には見えない。
若い兄ちゃんの様だ。
上下ともにかなり厚手の防寒着を着て,左ひじを斜面のコンクリートに付き,若干身体をお越し,
右手に何か持ってそれを一心不乱に見つめている。
・・・・・・
話しかけられたくないと言うオーラをかなり発散している。
・・・・・・
横を通り過ぎる時。
顔は前方を向けたまま,目の端に神経を集中すると。
スマホ。そしてヘッドホン。
スマホの画面を見ながら指だけが動いてる。
僕が通るのも気にならない様子。
通り過ぎてから,何度も何度もさりげなく振り返りながら見ても,そこから動く気配が全くないのです
「僕の今の居場所なんです。ここが。」と言わんばかりに。- 4.橋
橋の歩道を颯爽と走り過ぎようとしてる女性。
着ている物などから想像するにジョギングしてるのだと思う。
何の変哲もない普通の光景だったのです。
そして,前方の信号が赤の為,橋を渡り終える直前に速力を落とし歩き出していました。
橋を渡り終えた場所は信号機のある十字路。
横断歩道のちょっと手前で立ち止まり,もと来た方に戻り始めたのです。
信号待ちをするのが嫌か,あるいはジョギングを中止したのかと思ってなんとなく歩きながら見てると。
橋にかかる直前の歩道で急にしゃがみこみ。
転落防止の白いポールが上下に2本。
その間から一生懸命手を伸ばし「ガサゴソ」
何か落としたにしては不自然すぎる?
何かを探り当てた様子で立ち上がった彼女の手には?
雑誌?
捨てられてから結構日にちが経過してる様で,ゴワゴワになってる様に見えるのです。
それを一生懸命ページをめくりながら目を通してる。
結構交通量の多い交差点。
気にならないのかと思いつつ。
こんどは興味津々で,正面の堤防の上で足を止めて観察。
雑誌?かなりごわごわになってかさばってる様子?
手に取りゴワゴワに苦労しながらパラりパラリとめくっている。
数分後,全てを見終わったのか,,歩道の転落防止のポールの上から誰も手の届かい様なところへ「ポイ」
ポイした行方を確認しつつ,踵を返して何度目かの青信号の交差点を橋とは逆の方向にまた颯爽と走り始めたのです。
まるで,〝小学生が道端で見かけたポルノ雑誌〟
それを遠巻きにしながら『ジー』っと見つめ。
意を決したように手に取って見る。
そして,見終わって誰にも見せたくない。
だけど,持って帰れない。
扱いに困って誰の手も届かないところに捨てる・・・そんな光景。
「フ~ン。妙な物を見ちゃった」
そして,約30分後に同じ場所を通過中。
先ほどの女性が逆方向に走り去って行ったのです。
今度は何も拾わずに。
今思えばどんな雑誌だったのでしょう。確認すればよかったかな?
でも確認するのには,彼女のとった行動と似通った行動をとらなければいけなくなるので,かなり恥ずかしいです。