緩やかに,少し違和感を感じつつも,侵食をはじめていた。
それは慢心と言う思い上がりの衣に包まれ,
その衣が破れるとき初めて気づく。
破れる瞬間の衝撃は,ブラックホールの様に,健全な細胞を吸い込んでいく。
内側に向かって重力が凝縮され,
奇跡的な小宇宙の神秘を湛えた命を,
無感情に重力の法則にしたがい,現次元から余剰次元へ原子レベルの塵として放出する。
その一端を垣間見たのが約10年前と3年前。
慢心が飽和した時のスパイラルは,まるでハエ取りリボンの様に人を捕まえて離さない。
もがいても,もがいても。
その螺旋の迷宮から逃れられない。
ならばいっそう,迷宮のなかに活路を見出そう。
多くの爽快な思考を奪われ,プロテクトされた思考の中の暗闇で手を差し伸べる様な苦悩。
望みを失い,停滞しながら過去の記憶の中で,彷徨いながら削られ続ける命。
未成熟な精神的骨格者。
精神的骨格の未成長者。
ハリボテだった精神的骨格。
ストレスで崩れ去る骨粗鬆的精神骨格。
蜘蛛の糸の様な空間が蔓延し,思考の伝達が途切れ途切れになる。
断片的に繋がった思考回路も,徐々に浸食される圧力に圧潰する。
未成熟な精神的骨格者が,社会的な責任ある立場につく時。
保身と虚栄とが頭をもたげ,広く公平な立場で物事が考えられなくなる。
自分より力のある者には媚び諂い。
自分より力のない者には横柄になる。
そして,当人も,その周りの人たちも,その属する社会が押しなべて不幸になる。
友情などありはしない。
全て打算と保身,そしてその背景にある欲に支配され。
行動の規範はそのベクトルに全て左右される。
それを,微妙な具合に衣で包み込み,体裁を整えている。
いざと言うとき,手のひらを返したように,衣を脱ぎ捨て矛先を向けて来る。
一度噛んでみる事をすべきなのだろう。
サクっと噛んだ瞬間そのおびただしい悪意が認識できる。
認識できれば,そのまま咀嚼も嚥下もせず,吐き出せばよい。
そう言う空間が存在する。
判っていても理解はできない。
虚栄から生まれる嘘。
多くの思考の背景にある物。
それが全てだとは思いたくないけど,
やはりあの時以来芽生え,
10年に渡り彷徨った思考の果ての結論は・・・。
投影されるべきものが壊れてしまってるからなのかもしれないけど。
そう思わざるを得ない事が多い。