思い思いのコーヒーブレイク。
そして,全体がまだざわついてる中での,残業時間の出来事。
「**さん。炊飯器ってヒューズついてるんすかね」
「なんだよいきなり」
「あのですね。炊飯器の電源切り忘れてきたような気がするんです。火事になってないか心配で」
「いつの時代の話をしてるんだよ。って言うかどこの国のジャンク品使ってんだよ,いったい。
だいたい今の製品で保護回路ついて無い製品が国内で家電製品として売ることできると思ってるのかい。
それに炊飯器って炊き上がったら保温できるタイプなんだろう」
「はい」
「じゃ,問題ないんじゃないの。君は今まさに電気の回路設計をやってるんじゃないのかい。しっかりしろよ」
彼は県外から就職。アパートで一人暮らしをしていました。
「違うんです。炊飯のまま空焚きになってるじゃないかって思うんです」
「空焚きって言ったって,火災になることなんかないと思うけどね」
「でも心配なんです」
「う~ん。そうだな~・・・・いい方法が一つある」
「なんですか」
「君はアパートに電話あるんだろう」
「はい」
「留守電付かい」
「はい」
「留守電にしてる」
「多分」
「じゃ,今電話かけて見ろよ」
「どういうことですか」
「呼び出し音が鳴って留守電が働けば,電話は無事だからアパートは多分無事だって事だし。
焼け落ちてしまえば留守電は働かない。
ただ完全に焼け落ちてしまって回線がシュートせずオープン状態だったら,呼び出し音はなり続けると思うけどね」
「お~なるほど」
あわてて電話を掛け始めながら。
「ありがとうございます・・・・・・おおおっ呼び出し音が鳴ってる。留守電につながった。ははは無事だ無事だ」
と受話器を置いて,安心しきって仕事を始めようとした彼に向かって。
「今まさにだったら駄目だよね」
「?」
「もし,今まさに燃え始め出したのなら,分からないってことだよ」
「え?・・・・・」
「すみません。明日今日できなかった分残業して挽回しますんで,帰らせてください」
周囲で聴いていた人たちの笑いの渦の中,彼は帰宅したのであります。
幸い彼は翌日出勤。炊飯器もアパートも無事だったそうです。