"神の見えざる手" 手枷をかけてしまった 組織 と system
出版の度に購入てるんですけど,残念ながら,「ワクワク」しながら購入してるわけではありません。
必ず購入してるわりには,一気に読む事ができない本です。
その訳は読めば読むほど不愉快になるから。
本そのものではなく,書かれてる内容があまりにも愕然とする内容だからなのです。
そして,
2巻 ”第七章 原子村に住む 元東電社員の回顧 原子力発電の本当の姿” を読み進めているうちに,
何度も何度も中断せざるを得なくなり,3巻を購入した今現在,中断したままです。
◎タブー
津波はタブーと言う意識が電気事業者の間に蔓延していた。
その理由は,
津波を考慮に入れた安全設計には膨大な費用がかかる。
だから無視する。
コストパフォーマンスの追求のためだけに,根拠のない理論武装と伏線を張り巡らせ。
その根拠のない安全神話のプロパガンダに費やしたすべてを,電気料金に積算しながら。
津波が来ても津波の被害は想定に入れないと結論づけた。
この電気事業者は,津波が来る前に外部電源が地震のために喪失したことや(送電線鉄塔の倒壊),
炉心の冷却系統が津波の前に地震で壊滅的な打撃を受けていたこと否定し続けてる。
そして今も,現場の状況を捏造までして調査委員会の調査を阻んでいる。
彼らが捏造してまで,地震で起きた不具合を隠そうとしたよりどころとなったのは,
*****************************************
第二章 原子力損害賠償責任
(無過失責任、責任の集中等)
第三条
原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の
運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。
ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、
この限りでない。
*****************************************
と言う原子力損害の賠償に関する法律なのです。
津波をタブー視することができたのは,この法律によるところが大きいという事だと思います。
これは言うまでもなく,原子力村が中心となった御用学者,電気事業者,行政の三位一体で作られた法律?
電気事業者は気付いていながらも,対応していなかったと断定しています。
それは1991年10月30日の事故がきっかけで,元東電社員が気付いたと言う書き出しから始まります。
F1(福島第一原発)のタービン建屋で,冷却用の海水が腐食した配管から大量に漏れた事故があり,
その水が地下一階に流れ込み非常用ディーゼル発電機が使えなくなった。
地下一階?だよね。
地下一階と言う事はグランドレベルよりも,タービン建屋よりも低い場所と考えていいと思います。
と言う事は,流れ込んで当たり前だよね。
そしてこの元東電社員が,上司に
「津波が来たら一発で炉心溶融じゃないですか」
そして上司は
「そうなんだよ。でも安全審査で津波まで想定するのはタブー視されてるんだ」
津波を想定すると膨大なお金がいる。だから無視する。と言う意味。
この上司は,F1に赴任する前は,本店で原発の安全審査を担当していた。
(プロメテウスの罠 2 p20-p21)
震災後は ”想定外” と言う言葉で責任の回避を続けた。
ここまで読んで不愉快になり読むのを中断しました。
そして,数週間後に再開。
◎効率が虚偽を作りだし運用で正当化。
電気事業者の虚偽報告からはじまり,国の運用解釈により正当化していくまでが書かれています。
虚偽報告は想定問答集を作り,原発に基礎知識のない国の検査官を丸め込む等。
信じられないようなことが,日常的に行われていた。
何故原発の基礎知識のない素人が検査官になれるのかは,行政と言う組織の所以なのでしょうね。
ここで一言。
市場原理と言うのがあります。
サービスを提供して対価を得る会社もあれば,製品を売って対価を得る会社もある。
サービスが悪ければ,そのサービスは使わない。
製品の品質が悪ければ,その会社の製品は購入しない。
サービスに見合っただけの,製品の品質に見合っただけの金額かも判断される。
それが対価というものです。
常に市場の動向を注視しながら自らのサービスや製品の在り方を考えます。
当然,売り上げが下がっていれば,その原因をさぐり,見つけ出す努力をします。
そして,原因を究明し是正する。
そのことに労力を惜しまない。
それが市場で生き残るための摂理。
これらすべてが市場原理(神の見えざる手)となって市場が進化する。
この市場原理がある限り,いいサービスが受けられ,品質のいい製品を購入できる。
この原理に手かせをかけた組織が,公共機関のなかには多数あるとい言う事じゃないのかな。
インターロックと言う言葉を御存じでしょうか。
簡単に説明します。
①-②-③-④と言う手順で操作する装置があるとします。
途中の手順②や③を飛ばして④の操作ができないいようにする。
あるいは操作したとき装置を自動停止させる。
その考え方をインターロックと言います。
例えばエレベーターはドアが閉まるまでは上下に動かない。
ドアが開くのは各階に到着して停止してから。
アートマチック自動車のエンジン始動も,ギアがパーキングに入ってないと始動しない。
これがインターロックです。
手順を飛ばすと危険が伴うものには,すべてインターロックが設置されなければいけない。
当然原子力発電所には,いたるところにこのインターロックが設けてあると思います。
そして,燃料棒の交換の際もインターロックが設けられており,
燃料交換時や点検・検査時(原子炉の蓋が開いてる時)に,
制御棒を2本以上引き抜こうとするとインターロックがかかる仕組みになっている。
制御棒は2本以上引き抜けないシステムになっているという事です。
設置許可書にもそう記載されており,
そのインターロックの条件が付加されてないと設置許可が下りない。
”運用” できないわけですから,発電できないという事です。
しかし,コストパフォーマンス優先でこのインターロックを解除し,
燃料の交換や点検が行われていたという事です。
ちょっと寄り道をします。
原子炉の一番最深部にある(炉心)制御棒と燃料棒はどんなものかと言うと?
燃料棒:文字通り燃料の入った棒をいいます。
制御棒:燃料棒の燃料の燃焼を制御する棒と考えていただければ,わかりやすいと思います。
これを抜き差しして燃料の燃えるのをコントロールする十字の形の板状の棒です。
右図参照。
1本の制御棒は田の字に並ぶ4体の燃料集合体の間ピッタリ差し込まれています。
1本の制御棒と4本の燃料集合体,これをセルと言っています。
原子炉1基あたり
制御棒97~185本
燃料集合体は400体から800体
燃料集合体の構成
燃料棒 燃料集合体1体に264本
ペレット(長さ約10mm直径8mm)ウランをセラミック上に焼き固めたもの 燃料棒1本に360個
ペレット1個1家庭の約6か月の電力量石油ドラム缶200ℓ約2缶
ペレット一個当たりのエネルギーよりも
一般家庭でこんなに燃料を必要としてるという事に驚きました。
本題に戻ります。
設置基準では,燃料交換・点検・検査時は,
制御棒は一本以上引き抜けないようになってるし,
点検時にはすべて差し込んだまま行うことになっている。
燃料交換時や点検・検査時と言うのは原子炉の蓋が開いてる時です。
何故制御棒を2本以上引き抜けないようにしてあるかと言うと。
制御棒1本を引き抜いただけなら臨界が起きないが,
2本以上引き抜くと臨界が起きてしまう。
つまり,原子炉の蓋が開いてる時に臨界になってしまうと言う理由からです。
この状態で臨界に達してしまうと放射線量が著しく高くなり危険な状態になる。
臨界:原子核分裂の連鎖反応が一定の割合で継続している状態のことをいいます。
ですから2本以上引き抜けないようなインターロックの条件が付加され,
設置許可証にも記載されていると言う事です。
臨界を起こさせないという観点からだけ考えれば,
4つの燃料集合体を取り外したあとなら,
制御棒は引き抜けるわけで,
この電気事業者はそうやって燃料集合体と制御棒を引き抜き,
点検をするケースが多かったと記されています。
そのためには,
設置基準で付加されているインターロックを解除する必要があり,
模擬信号を入力してインターロックを解除してから,
必要な作業を行っていたという事です。
この多かったという微妙な言い方が気になりますけど,
コストパフォーマンスを考えて作られた運用手順で一度でも行われれば,
より手数のかかる設置規準を準拠することなどあるはずはないと思います。
ただ,国の立会検査のときにのみ設置規準を準拠していたから,
こういう微妙な書き方になってるのかもしれないと僕は解釈しました。
それは国の解釈が変遷し,
運用規準と設置規準は別物だという見解が出るまで続いいたのかもしれないですね。
燃料集合体を入れる時は,
その手順を逆にし制御棒を差し込んでから,燃料を入れるという手順で行っていた。
この燃料集合体を入れる手順(制御棒を差し込んでから燃料棒を差し込む)を間違えた時何が起きるかと言うと,
3本目の燃料集合体を入れた時臨界が起こり水素爆発が起きてしまう訳です。
だから設置基準では,
手順ミスによる事故防止のために制御棒だけは差し込んだままにしておくことになっているし,
インターロックで一本しか抜けないようになっているのです。
定期検査の際は,
カメラをいれて炉内構造物の検査義務があるし,
中性子検出器の交換作業もある。
作業効率を上げるためには,
制御棒が邪魔と言う事になり,
すべて抜いてから点検が行われていた。
そして,この電気事業者の運用上でのインターロックを解除を国の検査官は見抜けなかった。
もう一つ効率を考えるうえでネックになるのが
模擬燃料置き場の問題
1本の制御棒は田の字に並ぶ4本の燃料集合体の間にピッタリ差し込まれていて,
そのもので自立して立っているわけではなく,
4本の燃料集合体に支えられて立っている。
ですから燃料棒をすべて抜いてしまと倒れてしまうため,
抜いた燃料集合体の代わりに同じ形状の模擬燃料を差し込まなければいけない。
燃料の長さは約4mそれに見合う数の模擬燃料を常時炉内に置くことになると,
置き場所に困るという理由で制御棒をすべて抜き去るという設置規準に反する行為が行われていた。
◎インターロックの解除(設置許可違反)を見抜けなかった国の解釈の変遷
電気事業者の説明
「インターロックを設けなさいというのはきちんと未臨界を確保しなさいという事だと思います」
と前置きし,「同等の管理をすることで安全上の担保をした」
だから
「インターロックの除外は問題ない」
「設置許可違反ではありません」
インターロックを解除したらその安全規準は守られてるとは言えないと僕は思うのですけど。
国の解釈は
当初見抜けなかった国は,
どのような経緯でインターロックを解除し運用していたのかを知りえたのかは記載されてはいませんが。
燃料交換のときのインターロックの解除が設置許可違反にになるかに関しての国の変転。
①電気事業者の説明と同じく社内手順書にさえ定められていれば,保安規定に定めなくていい。
社内手順書(社外秘)でインターロックの扱いに触れていれば設置許可に違反しない。
②保安規定で定めなければいけない。
保安器手に記載なくば違反という事。
といいことはこの電気事業者は違反なのかと言うとそうではない。
当初より保安規定には「必要な制御棒が挿入」と記載されているから違反にはならない。
つまり原子力・暗線保安院はインターロックを解除するというところまで把握したうえで許可した。
という事らしい。
しかし,これは何らかの力が働いた後追い認可でしょうね。
そして,インターロックの意味を考えると,
そんな文言で解除できるほど軽いものではないと思います。
安全と効率を両立するのは難しいと思います。
だからと言って安全を犠牲にしてまでしていいことではないはずです。
◎出鱈目
最期に給水流量計の例を挙げて出鱈目ぶりを暴露しています。
そのまま転記いたします。
「火力発電所だと定期的に取り外して補正します。
そうしないと正しく測定できないからです。
ところが原発の場合,放射能があるから外すことができない。
補正ができない。
補正ができないので正確な数値が実はわからない」
給水流量計の数値から原子炉内の熱出力が換算される。
熱出力を基に400~800体ある燃料集合体の燃え具合が計算され,
その燃え具合からプルトニウムなど各種核物質の生成状況が計算される。
つまり給水流量計の数値が核物質の発生を計算する基礎になっている。
「大本が確かじゃないと,すべてが狂ってくるんです・・・」
この時点で・・・僕が臨界点に達してしまったという事になります。
出版の度に購入てるんですけど,残念ながら,「ワクワク」しながら購入してるわけではありません。
必ず購入してるわりには,一気に読む事ができない本です。
その訳は読めば読むほど不愉快になるから。
本そのものではなく,書かれてる内容があまりにも愕然とする内容だからなのです。
そして,
2巻 ”第七章 原子村に住む 元東電社員の回顧 原子力発電の本当の姿” を読み進めているうちに,
何度も何度も中断せざるを得なくなり,3巻を購入した今現在,中断したままです。
◎タブー
津波はタブーと言う意識が電気事業者の間に蔓延していた。
その理由は,
津波を考慮に入れた安全設計には膨大な費用がかかる。
だから無視する。
コストパフォーマンスの追求のためだけに,根拠のない理論武装と伏線を張り巡らせ。
その根拠のない安全神話のプロパガンダに費やしたすべてを,電気料金に積算しながら。
津波が来ても津波の被害は想定に入れないと結論づけた。
この電気事業者は,津波が来る前に外部電源が地震のために喪失したことや(送電線鉄塔の倒壊),
炉心の冷却系統が津波の前に地震で壊滅的な打撃を受けていたこと否定し続けてる。
そして今も,現場の状況を捏造までして調査委員会の調査を阻んでいる。
彼らが捏造してまで,地震で起きた不具合を隠そうとしたよりどころとなったのは,
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第二章 原子力損害賠償責任
(無過失責任、責任の集中等)
第三条
原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の
運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。
ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、
この限りでない。
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と言う原子力損害の賠償に関する法律なのです。
津波をタブー視することができたのは,この法律によるところが大きいという事だと思います。
これは言うまでもなく,原子力村が中心となった御用学者,電気事業者,行政の三位一体で作られた法律?
電気事業者は気付いていながらも,対応していなかったと断定しています。
それは1991年10月30日の事故がきっかけで,元東電社員が気付いたと言う書き出しから始まります。
F1(福島第一原発)のタービン建屋で,冷却用の海水が腐食した配管から大量に漏れた事故があり,
その水が地下一階に流れ込み非常用ディーゼル発電機が使えなくなった。
地下一階?だよね。
地下一階と言う事はグランドレベルよりも,タービン建屋よりも低い場所と考えていいと思います。
と言う事は,流れ込んで当たり前だよね。
そしてこの元東電社員が,上司に
「津波が来たら一発で炉心溶融じゃないですか」
そして上司は
「そうなんだよ。でも安全審査で津波まで想定するのはタブー視されてるんだ」
津波を想定すると膨大なお金がいる。だから無視する。と言う意味。
この上司は,F1に赴任する前は,本店で原発の安全審査を担当していた。
(プロメテウスの罠 2 p20-p21)
震災後は ”想定外” と言う言葉で責任の回避を続けた。
ここまで読んで不愉快になり読むのを中断しました。
そして,数週間後に再開。
◎効率が虚偽を作りだし運用で正当化。
電気事業者の虚偽報告からはじまり,国の運用解釈により正当化していくまでが書かれています。
虚偽報告は想定問答集を作り,原発に基礎知識のない国の検査官を丸め込む等。
信じられないようなことが,日常的に行われていた。
何故原発の基礎知識のない素人が検査官になれるのかは,行政と言う組織の所以なのでしょうね。
ここで一言。
市場原理と言うのがあります。
サービスを提供して対価を得る会社もあれば,製品を売って対価を得る会社もある。
サービスが悪ければ,そのサービスは使わない。
製品の品質が悪ければ,その会社の製品は購入しない。
サービスに見合っただけの,製品の品質に見合っただけの金額かも判断される。
それが対価というものです。
常に市場の動向を注視しながら自らのサービスや製品の在り方を考えます。
当然,売り上げが下がっていれば,その原因をさぐり,見つけ出す努力をします。
そして,原因を究明し是正する。
そのことに労力を惜しまない。
それが市場で生き残るための摂理。
これらすべてが市場原理(神の見えざる手)となって市場が進化する。
この市場原理がある限り,いいサービスが受けられ,品質のいい製品を購入できる。
この原理に手かせをかけた組織が,公共機関のなかには多数あるとい言う事じゃないのかな。
インターロックと言う言葉を御存じでしょうか。
簡単に説明します。
①-②-③-④と言う手順で操作する装置があるとします。
途中の手順②や③を飛ばして④の操作ができないいようにする。
あるいは操作したとき装置を自動停止させる。
その考え方をインターロックと言います。
例えばエレベーターはドアが閉まるまでは上下に動かない。
ドアが開くのは各階に到着して停止してから。
アートマチック自動車のエンジン始動も,ギアがパーキングに入ってないと始動しない。
これがインターロックです。
手順を飛ばすと危険が伴うものには,すべてインターロックが設置されなければいけない。
当然原子力発電所には,いたるところにこのインターロックが設けてあると思います。
そして,燃料棒の交換の際もインターロックが設けられており,
燃料交換時や点検・検査時(原子炉の蓋が開いてる時)に,
制御棒を2本以上引き抜こうとするとインターロックがかかる仕組みになっている。
制御棒は2本以上引き抜けないシステムになっているという事です。
設置許可書にもそう記載されており,
そのインターロックの条件が付加されてないと設置許可が下りない。
”運用” できないわけですから,発電できないという事です。
しかし,コストパフォーマンス優先でこのインターロックを解除し,
燃料の交換や点検が行われていたという事です。
ちょっと寄り道をします。
原子炉の一番最深部にある(炉心)制御棒と燃料棒はどんなものかと言うと?
燃料棒:文字通り燃料の入った棒をいいます。
制御棒:燃料棒の燃料の燃焼を制御する棒と考えていただければ,わかりやすいと思います。
これを抜き差しして燃料の燃えるのをコントロールする十字の形の板状の棒です。
右図参照。
1本の制御棒は田の字に並ぶ4体の燃料集合体の間ピッタリ差し込まれています。
1本の制御棒と4本の燃料集合体,これをセルと言っています。
原子炉1基あたり
制御棒97~185本
燃料集合体は400体から800体
燃料集合体の構成
燃料棒 燃料集合体1体に264本
ペレット(長さ約10mm直径8mm)ウランをセラミック上に焼き固めたもの 燃料棒1本に360個
ペレット1個1家庭の約6か月の電力量石油ドラム缶200ℓ約2缶
ペレット一個当たりのエネルギーよりも
一般家庭でこんなに燃料を必要としてるという事に驚きました。
本題に戻ります。
設置基準では,燃料交換・点検・検査時は,
制御棒は一本以上引き抜けないようになってるし,
点検時にはすべて差し込んだまま行うことになっている。
燃料交換時や点検・検査時と言うのは原子炉の蓋が開いてる時です。
何故制御棒を2本以上引き抜けないようにしてあるかと言うと。
制御棒1本を引き抜いただけなら臨界が起きないが,
2本以上引き抜くと臨界が起きてしまう。
つまり,原子炉の蓋が開いてる時に臨界になってしまうと言う理由からです。
この状態で臨界に達してしまうと放射線量が著しく高くなり危険な状態になる。
臨界:原子核分裂の連鎖反応が一定の割合で継続している状態のことをいいます。
ですから2本以上引き抜けないようなインターロックの条件が付加され,
設置許可証にも記載されていると言う事です。
臨界を起こさせないという観点からだけ考えれば,
4つの燃料集合体を取り外したあとなら,
制御棒は引き抜けるわけで,
この電気事業者はそうやって燃料集合体と制御棒を引き抜き,
点検をするケースが多かったと記されています。
そのためには,
設置基準で付加されているインターロックを解除する必要があり,
模擬信号を入力してインターロックを解除してから,
必要な作業を行っていたという事です。
この多かったという微妙な言い方が気になりますけど,
コストパフォーマンスを考えて作られた運用手順で一度でも行われれば,
より手数のかかる設置規準を準拠することなどあるはずはないと思います。
ただ,国の立会検査のときにのみ設置規準を準拠していたから,
こういう微妙な書き方になってるのかもしれないと僕は解釈しました。
それは国の解釈が変遷し,
運用規準と設置規準は別物だという見解が出るまで続いいたのかもしれないですね。
燃料集合体を入れる時は,
その手順を逆にし制御棒を差し込んでから,燃料を入れるという手順で行っていた。
この燃料集合体を入れる手順(制御棒を差し込んでから燃料棒を差し込む)を間違えた時何が起きるかと言うと,
3本目の燃料集合体を入れた時臨界が起こり水素爆発が起きてしまう訳です。
だから設置基準では,
手順ミスによる事故防止のために制御棒だけは差し込んだままにしておくことになっているし,
インターロックで一本しか抜けないようになっているのです。
定期検査の際は,
カメラをいれて炉内構造物の検査義務があるし,
中性子検出器の交換作業もある。
作業効率を上げるためには,
制御棒が邪魔と言う事になり,
すべて抜いてから点検が行われていた。
そして,この電気事業者の運用上でのインターロックを解除を国の検査官は見抜けなかった。
もう一つ効率を考えるうえでネックになるのが
模擬燃料置き場の問題
1本の制御棒は田の字に並ぶ4本の燃料集合体の間にピッタリ差し込まれていて,
そのもので自立して立っているわけではなく,
4本の燃料集合体に支えられて立っている。
ですから燃料棒をすべて抜いてしまと倒れてしまうため,
抜いた燃料集合体の代わりに同じ形状の模擬燃料を差し込まなければいけない。
燃料の長さは約4mそれに見合う数の模擬燃料を常時炉内に置くことになると,
置き場所に困るという理由で制御棒をすべて抜き去るという設置規準に反する行為が行われていた。
◎インターロックの解除(設置許可違反)を見抜けなかった国の解釈の変遷
電気事業者の説明
「インターロックを設けなさいというのはきちんと未臨界を確保しなさいという事だと思います」
と前置きし,「同等の管理をすることで安全上の担保をした」
だから
「インターロックの除外は問題ない」
「設置許可違反ではありません」
インターロックを解除したらその安全規準は守られてるとは言えないと僕は思うのですけど。
国の解釈は
当初見抜けなかった国は,
どのような経緯でインターロックを解除し運用していたのかを知りえたのかは記載されてはいませんが。
燃料交換のときのインターロックの解除が設置許可違反にになるかに関しての国の変転。
①電気事業者の説明と同じく社内手順書にさえ定められていれば,保安規定に定めなくていい。
社内手順書(社外秘)でインターロックの扱いに触れていれば設置許可に違反しない。
②保安規定で定めなければいけない。
保安器手に記載なくば違反という事。
といいことはこの電気事業者は違反なのかと言うとそうではない。
当初より保安規定には「必要な制御棒が挿入」と記載されているから違反にはならない。
つまり原子力・暗線保安院はインターロックを解除するというところまで把握したうえで許可した。
という事らしい。
しかし,これは何らかの力が働いた後追い認可でしょうね。
そして,インターロックの意味を考えると,
そんな文言で解除できるほど軽いものではないと思います。
安全と効率を両立するのは難しいと思います。
だからと言って安全を犠牲にしてまでしていいことではないはずです。
◎出鱈目
最期に給水流量計の例を挙げて出鱈目ぶりを暴露しています。
そのまま転記いたします。
「火力発電所だと定期的に取り外して補正します。
そうしないと正しく測定できないからです。
ところが原発の場合,放射能があるから外すことができない。
補正ができない。
補正ができないので正確な数値が実はわからない」
給水流量計の数値から原子炉内の熱出力が換算される。
熱出力を基に400~800体ある燃料集合体の燃え具合が計算され,
その燃え具合からプルトニウムなど各種核物質の生成状況が計算される。
つまり給水流量計の数値が核物質の発生を計算する基礎になっている。
「大本が確かじゃないと,すべてが狂ってくるんです・・・」
この時点で・・・僕が臨界点に達してしまったという事になります。